内閣府が4-6月期のGDP(国内総生産)速報値を発表しました。
年率2.2%で3期連続の増加は、コロナ前の水準に戻したとのこと。
これは景気が上向いてきたことを意味しているので素直に喜んでいいはずですが...。
実感としては物足りなさを感じ、一般消費者においては景気回復の実感が伴っていません。
その物足りなさの正体を探っていきます。
GDPとは
国内総生産のことで、一定期間内に国内で新たに生み出されたモノやサービスの付加価値のことです。GDPには日本企業が国外で生産した付加価値は含まれません。GDPは国の経済力の目安としてよく用いられ、日本の名目GDP(2020年)は535.5兆円(5.04兆ドル、1ドル=106.8円で計算)と、米国(20.90兆ドル)、中国(14.72兆ドル)に次ぐ世界第3位の経済規模となっています(内閣府資料より)。
このGDPが前年同期や前期と比べてどのくらい増減したのかを見ることで、国内の景気変動や経済成長を推定することができ、それを「%」で示したものを経済成長率といいます。
4-6月期GDPが3期連続の伸びで喜びも束の間。喜んでばかりもいられない理由がある。
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GDPが三期連続で続伸しているのは、日本経済にとってはなんとも喜ばしいことです。
コロナの行動制限により萎縮気味だった日本経済のエンジンが、このままフルスロットル全快になることを祈るばかりです。
しかし、GDPが3期連続でプラスであるにも関わらず、日本国内において景気がよくなってきたという実感が薄い。
それはなぜなのでしょうか。
そこには実質GDIの数値に答えが隠されていました。
参考
GDI
正式名称は国内総所得(Gross Domestic Income)。国全体の経済の大きさを所得の面から計測した指標のこと。国内で一定期間内に支払われた賃金と利潤、配当等の合計額を指す。
参照:野村證券
同じ期間で実質GDIは年率▲1.2%...。
GDPがプラスでありながら、実質GDIがマイナスで推移しているので、景気が良くなってきたという手ごたえが薄いわけです。
GDPが堅調でも、実質GDIがマイナスの意味するところ。
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実質GDIがマイナスとはどういうことなのでしょうか。
確かに国内における生産された付加価値を示すGDPは大事な指標です。
経済規模が比較時期と比べて大きくなったのか、それとも小さくなってしまったのかを単純に測れるからです。
しかし実際には、一般消費者にとって最も需要なのは、実質的な所得の伸びを示す指標であるGDIだと言っても過言ではありません。
それが国内の経済規模がプラスになっている傍ら、国内の所得を示す指標のGDIがマイナスなのですから、景気拡大の実感を得られないのも納得です。
これには物価上昇率が起因していると考えます。
所得が増えておらず輸入品が値上がりをしている。その値上がり分が海外に流出しているのです。
GDPがプラスの時にこのようなことがよく散見されるので、GDIと並べて読み解く必要性があるでしょう。
お金が海外に漏れ出ているのであれば、日本国内でお金が循環せず、景気のスイッチがかかるのにどうしても時間が掛かります。
国内循環型経済無くして、日本経済復活はないと考えます。
GDP(国内総生産)とGDIの数値を見比べるようにしよう。
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なぜGDP速報値発表を受けても即座に大喜びができない理由は前節で述べたとおりです。
その点について最後にまとめます。
GDPの数値とGDIの数値を常に並べ、比較するようにしましょう。
3期連続のGDP続伸は大いに評価したいと思います。
コロナの行動規制下を脱し、経済も回り始めたのだと思います。
しかし実質GDIがマイナスでは...。
経済規模が大きなってきた反面、物価上昇分が海外に流出しているのではないか。
増えた分が海外に行ってしまえば、日本経済は草刈り場化しているようなものです。
国内で景気循環し力強い国内経済を作らなくては、せっかく積み上げた積み木はすぐに崩れ去るでしょう。
そのためにも国内循環型社会を構築し、国内でお金が回るシステムに転換しないと誰もが豊かになれません。
GDPがプラスになったから経済がよくなってきた、というのは早合点であると認識しましょう。
ではこのへんで。